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歯が欠損した場合の第一選択として確立されたインプラント治療ですが、長期間使っていくと多少のトラブルが起きることもあります。
さまざまなトラブルの中で、特にシビアなトラブルは「ゆるみやぐらつき」。
「インプラントがゆるんでぐらぐらしている」
という患者さんの訴えに、一瞬ドキッとしつつ、まずは何がゆれているのかを冷静に確認していきます。インプラントの周囲を肉眼や触診で確かめつつ、デジタルレントゲン写真撮影も同時に行い、その原因と解決法を探るのです。
インプラントのゆるみ・ぐらつきの原因の中で、最も多い症例がアバットメントと呼ばれる部分の緩みによるものです。
アバットメントとは、上部に取り付けられている人工歯(上部構造)とインプラント体を連結するための部品のこと。アバットメントはスクリュー式のネジで固定されていますが、一定以上の荷重がかかるとネジが緩んだり壊れたりしてインプラント体の骨結合を守るようにできています。
また、アパットメントは、強い力が加わった際にインプラント体に不都合が起こらないよう、あえてスクリューが緩んだり破損したりする設計になっています。この緩みが原因で、インプラントがぐらつくことがあります。[注1]
アバットメントの緩みの場合、かみ合わせの不和が原因で不要な荷重がインプラントにかかっていることが多いので、一旦外してかみ合わせを調整。その後クリーニングしてから再装着します。
ゆれやぐらつきを放置すると炎症を起こして骨吸収が進むので、症状が現れたら早期の対応が必要ですね。
インプラントのゆるみやぐらつきの原因の中で、もっとも重症なのはインプラント体ごとの「ゆれ」です。インプラント体と、これを支える骨との間にすき間ができることが原因で、インプラントがぐらついてしまうのです。
インプラントを支える周囲の骨が荷重や細菌などによって吸収され減ってしまい、インプラント体との間に隙間ができてしまった状態、いわゆる「骨吸収」が主な要因とされます。
また、インプラントを埋めてからすぐに起きたのであれば、手術時の骨への過剰なストレスが原因の可能性も。しばらく経ってから起きたのであれば、かみ合わせによる荷重や清掃不良によるものも原因として考えられます。
この状況の対応は最も重篤。最悪の場合、インプラントの撤去が必要になるなど、インプラントのぐらつきの中では最も重症な例と言われています。[注2]こうなると患者さんの身体的にも費用的にも負担が大きくなってしまいます。
アバットメントのゆるみもなく、インプラント体そのものもゆれていないとなると、インプラント体の破折、インプラントの上部構造そのものに破折が生じたことが原因によるインプラントのぐらつきが考えられます。
上部構造の破損でなく、インプラント体に亀裂が入りネジ固定が緩んでしまっている場合は、レントゲンなどで確認すると感染症を起こして骨吸収が起きていることもありますので慎重に見極める必要があります。歯ぎしりの多い患者や、噛む力が強い患者に見られるケースが多くなっています。[注2]
このように、インプラントのゆるみやぐらつきと一口に言っても原因はさまざま。または複合していることも。経験と勘を頼りにトラブルの原因を探る必要があるので、ある程度の熟練した経験と準備がとても重要になるのです。
インプラントのゆるみ・ぐらつきの中でも、痛みを伴う場合、その原因として以下のようなものが考えられます。
事前の検査などが不十分であると、人工歯根が不適切な角度で埋入されてしまうケースがあります。
結果的にインプラント体が、他の歯の歯根や神経などに触れてしまうことで痛みが生じるのです。
また、埋入角度が不適切であった場合にはアバットメントのゆるみなども生じ、歯のぐらつきと同時に痛みが併発するということになります。
インプラントの術後、患者さまご自身のセルフケアが不十分な場合、インプラントの周囲が細菌に感染して炎症を起こすことがあります。これを、インプラント周囲炎と言います。
インプラント周囲炎が悪化すると、インプラントが揺れてきたり、取れてしまったりすることもあるので、日常のケアはしっかりと行ってください。
ちなみにインプラント周囲炎は、必ずしも痛みを伴う症状ではありませんが、悪化すると腫れや違和感などが生じるので、これを痛みと感じてしまう患者さまも少なくはありません。
上顎には、骨の上に上顎洞と呼ばれる空洞部分があります。
非常にまれなケースにはなりますが、上の奥歯にインプラントを埋入する際、インプラント体がこの上顎洞に落ちてしまうことがあります。
この場合、治療直後はもちろんのこと治療中にも強い痛みを伴い、上部構造のぐらつきやインプラントが取れてしまうことも起こり得ます。
痛みが伴うインプラントのゆれ・ぐらつきが見られる場合には、至急、治療を受けた歯科医院に行って原因を特定してもらうことが先決。CTやレントゲン撮影をすれば、簡単に原因が分かります。
検査の結果、埋入したインプラント体が揺れていることが判明した場合には、残念ながら再手術が必要となります。原因によっては、無償で再手術を受けることができる場合もあるので、アフターケアについても事前にしっかりと確認しておきましょう。
インプラント体やアバットメントなどの器具の問題とは別に、インプラントの周囲に生じた炎症が原因でインプラントがぐらついたり、ゆるんだりすることがあります。この症状のことを、インプラント周囲炎と言います。[注1]
インプラント周囲炎とは、その名のとおり、インプラント周囲に生じる炎症のこと。炎症を放置して時間が経ってしまうと、骨の吸収が進み、インプラントのぐらつきやゆるみ、最悪の場合にはインプラントの喪失にもつながることがあります。
インプラント周囲炎を予防するためには、日常の口腔清掃が重要となります。インプラント治療を受けた後、歯科医師や歯科衛生士から日常的な口腔ケア方法の指導を受けるはずですが、これを毎日きちんと実践し、インプラント周囲炎を予防するよう心がけてください。
万が一、インプラントの周囲に炎症のような症状が見られた場合には、速やかに歯科医を受診しましょう。
また、口腔ケアを万全に行っている、かつ経過に問題はないという方であっても、歯科医師の指示にしたがって定期的に経過観察(メンテナンス)を受けるようにしてください。
冒頭の相談内容に戻ります。こちらのケースは、他院で数年前に入れたインプラントがぐらついているとのこと。周囲の歯肉に炎症はなく指で触れながら揺らしてみても、インプラント体そのもののゆれも見受けられませんでした。
そこで、レントゲンで撮影してみるとアバットメントの連結部にわずかな隙間が。つまり、インプラント体の骨結合は問題がなく、上部構造と連結しているアバットメントの緩みが原因でした。
しかし、アバットメントと上部構造のオールセラミッククラウン(人工歯の部分)はしっかりついていましたので、わざわざ壊して再製作するとなると費用的にも負担になってしまいます。そこで、咬合面から穴をあけてアバットメントにアクセスしネジを完全に緩ませ、オールセラミッククラウンごとアバットメントを外して清掃し再装着するという処置にいたりました。
今回の緩みをきっかけに、もともと接着固定だったインプラントをスクリュー固定へと変更しています。
最良の結果を得るために必要な最少の治療で、そして費用もなるべく負担が少なくなるように努めることも医療人として大切なことです。
アバットメントの揺れではなく、インプラント体そのものが揺れてしまった場合、歯科医院ではどのように対処するか。もちろん状態にもよるため一概にはいえませんが、インプラントの再手術が必要となる可能性が高いです。
インプラント周囲炎とは、いわばインプラント周辺の歯周病のこと。
歯周病が悪化すると、歯がぐらついたり、抜けてしまったりすることがありますが、インプラント周囲炎も同じように、インプラントがぐらついたり抜けてしまったりすることがあります。
修復が難しいほどインプラント周囲炎が進行してしまった場合には、ご自身ではどうすることもできないため、再手術を受けることになることがほとんど。
ゆるみやぐらつきを感じる前から、定期的にクリニックでケアを受けることで、インプラント周囲炎は防げる場合がほとんどです。
歯ぎしりや食いしばりが強い方の場合、物理的な力が原因となって、インプラントがゆれてしまうことがあります。
多少のゆれであれば、若干の調整で治すことができる例が多いです。インプラントが抜けてしまうほどであった場合は、クリニックに相談しましょう。
インプラントを埋入してから20年、30年と経つと、中には経年劣化によってインプラントがぐらついてきてしまう例もあります。インプラントの寿命ということですね。
個人差が大きく一概に何年とは言いがたいのですが、インプラントにも物理的な寿命があります。その際には、使用してきたインプラントを取り除き、再手術を受ける必要があります。
インプラントが自由診療である以上、ゆれやぐらつきを治す際の治療費も保険の適用外となります。つまり、クリニックによって治療費が異なる、ということです。
かかりつけのクリニックに相談、もしくはゆれやぐらつきに関する修正、相談は当院でも受け付けています。大がかりな再手術となってしまう前に気になることがあれば一度クリニックに相談してみることをオススメします。
メンテナンスのために定期的に通院し、なおかつ日常のケアも正しく行っていても、インプラントに何らかの不具合が起こるケースはもちろん考えられます。
その場合には、メーカーやクリニック独自の保証制度を受けられる可能性があります。保証が適用されれば、基本的には無料で再手術を受けられることも。
ただし保証には期間や条件が設定されていることが多いため注意が必要です。インプラント治療を受けたクリニックで、保証についてもしっかりと聞いておきましょう。
インプラントは天然歯同様か、それ以上によく咬めるようになります。しかしながら、歯根膜とよばれる天然歯特有のクッションがないため、荷重が大きすぎると緩衝できませんし、自己再生能力も少ない。ですので、定期的なメインテナンスがとても重要といえます。
ぐらつき、ゆれ、違和感があったらすぐに歯科医師に相談してください。
早期の対応であれば、その分簡単に修理ができます。放置してしまうと、悪化の一途をたどりますので、くれぐれも放っておかないように。
手術をしたクリニックに、現在通院していない場合は他院でも構いません。ただし、修理の際にインプラントシステムに適応したドライバーなどの器具は必須ですので、多くのインプラントシステムに精通していて器具を常に準備しているクリニックの方が、受け入れがスムーズです。
インプラント修理のためにクリニックをお探しの方は、ぜひ以下の記事にも目を通してみてください。
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