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インプラントの失敗、 その理由とは

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インプラントの死亡事故を防ぐには

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インプラントの死亡事故を防ぐには何に気をつければよいのか

インプラント技術は飛躍的に進化し、より自然で美しい歯を一昔前よりも安価で手に入れられる時代になりました。しかし、多くの人がインプラント治療を受けるようになった一方で、インプラント治療をめぐってトラブルが尽きないのも事実です。
最悪なケースでは2007年、インプラント治療中の動脈損傷が原因で、70代の女性患者が亡くなられました。この時治療にあたった歯科医師は業務上過失致死で起訴されましたが、その公判の過程で浮き彫りにされたのは、そのクリニックで行われていたお粗末なインプラント治療の実態でした。

インプラント治療による死亡事故事例

前述した死亡事故に関して、民事訴訟では和解したのですが、事態は刑事裁判にまで発展。裁判当時は原告・被告の主張が真っ向から対立しました。当時の公訴事実の要旨を以下に記載しておきます。

「平成19年5月22日、被害者に対する歯科インプラント手術を実施。ドリルを使用してインプラント体の埋入窩を形成するに当たり、ドリルを挿入する角度及び深度を適切に調整して埋入窩を形成すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、ドリルを挿入する角度及び深度を適切に調整せず、ドリルを口腔底の軟組織に突出させた過失により、その付近の血管をドリルで挫滅させるなどし、出血により口腔底等に発生した血腫によって気道閉塞を生じさせて被害者を窒息させ、同月23日、搬送先病院において、死亡させたものである。」

具体的な経緯

平成19年5月22日、2回に分けて行われる予定の8本のインプラントのうち、1回目の治療として下顎の5本のインプラント治療が行われました。

最初の4本までは、特に問題なく治療が終了。ところが最後の1本(第2小臼歯)の治療の際、ドリルで骨に穴を開けたにも関わらず、インプラント体が固定しませんでした。そこで歯科医師は、骨の別の部分にドリリングを実施。後のアバットメントの取り付けの際、患者に異変が生じました。

歯科医師が改めて治療部分を覗くと、舌の下側にある口腔底と呼ばれる部分に極度の腫れを確認。出血があったと考えて圧迫止血をするなどの緊急処置を行ったものの、ほどなく患者はうなり声をあげ、やがて腕の力が抜けて垂れ下がりました。

AEDをはじめとする、各種蘇生処置を行ったものの、効果を得られず。病院に救急搬送され、翌日午前、患者は死亡しました。

民事訴訟

患者の遺族は、治療を担当した歯科医師に対して注意義務違反があったとし、民事訴訟を起こしました。

これに対し、歯科医師側は「第2小臼歯部においては、生命に危険が生じるほどの出血性の偶発症が生じることはないのが一般的な医学的知見であり、事故を予測することが困難であった」と主張。

双方の主張は対立したまま約3年が経ち、最終的に和解に至りました。和解金として歯科医師から遺族へ支払われた金額は、約5,935万円だったとされています。のち、この一件は刑事訴訟へと移行します。

刑事訴訟

民事訴訟の和解成立から約3ヶ月後、東京地検は、治療を行った歯科医師について、業務上過失致死罪で起訴しました。東京地検における公訴事実の要旨は次の通り。

「被告人である歯科医師が注意義務を怠りドリルで血管を挫滅させ、出血により被害者を窒息させて死亡に至らしめた」

これに対して歯科医師の弁護人は、民事訴訟の際と同様の理由で無罪を主張。双方の見解は刑事訴訟でも真っ向から対立しました。

東京地裁の判決は、禁固1年6ヶ月・執行猶予3年の有罪。該当のインプラント手術における出血について、各種の文献や証人の証言等を根拠に、その危険性を予見できたと結論付けました。

控訴

歯科医師は判決を不服として即日控訴。東京地裁の判決は事実誤認であるとし、新たな弁護人を立て真っ向から争う姿勢を貫いています。

参考サイト・参考文献

インプラント死亡事故を避けるために求められる歯科医の能力

いざという事態に備え、救命スキルの習得が必須

インプラント治療は外科的な処置を伴うものです。治療するのはまさに喉頭や咽頭といった生命に関わる大切な器官が集まる場所。浮腫や血腫によって気道が詰まってしまい、結果窒息が原因で死に至ることを考えれば、歯科医であっても当然救命スキルは身につけておかなければなりません。

インプラントの診断基準や治療コンセプトの明確化は必須

高度なレベルの専門性や知識・経験が求められるインプラント。安全な治療を行う上で、診断基準や施術の標準化は急務です。
日本口腔インプラント学会でも、治療前の術前検査などの基準を明確にしていくというメッセージが発表されていますが、インプラントに関しての診療ガイドラインは策定されていないのが現状です。これが訴訟や歯科医事紛争の増加につながっているのです。
こうした中で患者さんが安心してインプラント治療を受けるには、歯科クリニックや歯科医が率先して独自にインプラントの診断基準や治療コンセプトを打ち出して行かなければなりません。

診断・治療技術の向上とインプラントのための機器の充実化

死亡事故を起こした歯科クリニックでは、施術前に歯科用CTによる撮影がなされていませんでした。もし歯科用CTによる撮影がされていて、細密な骨の情報をあらかじめ医師が確認していれば、不測の事態に対処できた可能性は十分あったはずです。
歯科用CTやインプラント治療をより正確に行うための機器や設備は高額なものになるので、導入している歯科クリニックはまだまだ多くありません。ただし今後、こうした最新機器が充実しているかどうかは、クリニックを選択するためのひとつの基準となるでしょう。

患者サイドで事故を予防するためのポイント

インプラントが広く世の中で認知されてきた昨今、世界中の歯科学会で様々な症例の研究や発表がなされ、施術する歯科医の知見や経験値も格段に上がっています。しかし、それでも治療に失敗したり、トラブルになったりするケースはあります。
インプラント治療でトラブルに会わないために、患者さん側はどういった点に注意すればよいのでしょう。

それは、インフォームド・コンセントをしっかりと受けることです。インフォームド・コンセントとは、検査や手術、投薬などの医療行為を受ける患者サイドが、その治療や臨床試験の内容についてよく説明を受け十分に理解した上で、きちんと自分の意志で医師と治療方針について合意すること。
インプラント治療であれば、どのような治療内容なのか、治療を行うことでのメリット・デメリット、治療期間、かかる費用、麻酔や痛み、術後の状態、経過不良時のリカバリー方法、回復後の状態、メンテナンスなど、しっかりと事前に説明を受け、疑問点や不安は解消しておくこと。これは日本口腔インプラント学会でも採用された治療指標となっています。

インプラント治療は高度な技術が要求される歯科治療です。「近いから」や「安いから」などの理由で安易にクリニックを決定するのではなく、自身の身体や精神に大きく影響する治療ととらえて、クリニック探しは慎重かつ丁寧に行うようにしましょう。

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